【小説・漫画】2020/7月読了 良かった作品
暑すぎてお外に出れません。
○小説
①夜よ鼠たちのために(連城三紀彦)
こちらで感想記事を書きました。超絶技巧の短編集かつ、語り手と真相側の認識差の落差に萌える作品集でした。
②人間たちの話(柞刈湯葉)
全編通してドライかつどこかとぼけた味わいのあるSF短編集。表題作がSFのもっともらしい理屈を並べ立てた上で理屈で割り切れない人間の本質の話を書いててとてもよかったです。あとは「宇宙ラーメン重油味」がスペース☆ダンディ的なコミカルさで楽しかったな。
③タイタン(野崎まど)
仕事を知らない世代のカウンセラーと仕事に疲れたAIの対話で「仕事」とは何かを問うSFであり、二者の対等な関係が大変良い変格恋愛小説。おねショタものとしてもおすすめ。
④厭な小説(京極夏彦)
ホラーのようだけどホラーというよりSFアプローチの作品集だと思った。どのようなコミュニケーションを取っても徹底して自身には理解できないものはそれこそ「厭」だという感覚しかないのだと思う。表紙にもなっている「厭な彼女」がディスコミュニケーションの極致らしく大変厭な話で一番良かったかな。
⑤鹿の王 水底の橋(上橋菜穂子)
本編は凄いなと思いつつ乗り切れないところがあったんですが、オタワル医療側に話を絞った外伝は滅法面白い医療サスペンスファンタジーでした。上橋菜穂子作品のいいところは、主人公側と対立する文化(今作だと清心教)の主張も主人公側と同等に扱う姿勢だと思います。
⑥グロテスク(桐野夏生)
信頼できない語り手でどこにでもある人間の悪意とすぐそばにある地獄を書き切った大作。この世は右を向いても左を向いても地獄なんです!知ってましたか!暗澹たる気分になりますが不思議とラストは不快感がない。アンチカタルシスなのにな、不思議。
⑦あの子の殺人計画(天祢涼)
子どもの貧困・虐待といった問題を大変読みやすく伝える良シリーズ。今作はミステリとしての仕掛けそのものをもってテーマの悲惨さを浮き彫りにする構造が大変素晴らしいです。凄くいいシリーズなので長く続いてほしいな。
★漫画(一般)
①チェンソーマン(藤本タツキ)
最新刊まで一気読み。社会性が皆無ながら明るく前向きなデンジ君が可愛いのと、どんどんキャラを切り捨てていく勢いが凄い。死体の山の上にしか建てられない面白さだと思う。
②金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(船津紳平)
終わってしまった……。原作の穴に的確にツッコミを入れながら原作へのリスペクトを常に忘れない、原作愛をビシバシ感じる良外伝でした。原作のストックがないから仕方ないけど、ふらっと再会してほしい。具体的に言うと原作でもトップクラスのトンデモトリックの錬金術殺人事件を扱ってほしい。
③マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタクだった話~(町田粥)
終わってしまった……。ここで終わるとは思わなかったのでショック。徹底してオタクへの温かな視線と節度をわきまえた姿勢が心地よいシリーズでした。余裕が出来たら長文感想書きたい。いい〆方だと思うけど、こちらもふらっと復活してくれるととてもうれしい。
④推しの子(赤坂アカ/横槍メンゴ)
こちらは新規シリーズ。推しアイドルの子として転生する導入からして凄いんだけどその後のジェットコースター展開が凄い。少しでも目を離すと振り落とされそう。どう転ぶのか全然読めないので続きがめちゃめちゃ楽しみ。
☆BL漫画
①記憶の怪物(MAE)
BL漫画はこの作品が大当たり。死んだ兄の遺物を食べさせて兄の姿になる異種生命体に対して、「これを兄とみなしてそのまま恋愛になったら嫌だな」だと思ったら、その倫理的にどうかと思う点に真正面から向き合っている姿勢がいいです。……と思ってたら向き合い過ぎて2巻ラストが凄い展開になっていた。続きどうなったの……!?