【ゲーム】アンジェリークルミナライズ(アンミナ)体験版プレイ感想
アンジェリークの新作、アンジェリークルミナライズ(略称アンミナ)の体験版が配信されたのでプレイした。
25歳、独身会社員――なんで私が女王に??
「宇宙は、女王と9人の守護聖たちに守られている」
その事実が、神話化してしまった現代世界。
25歳のアンジュは、疲れ果てていました。がんばってはいるけど、日々の生活は不安だらけ。
たまにはお酒でも飲んでみるか……そんな思いで入ったバーで、彼女は怪しげな転職の誘いを受けます。
冗談だろうと、軽い気持ちで契約書にサインをしたその瞬間、空からペガサスに乗った青年が現れました。
「契約したな、女王候補。お前を迎えに来てやったよ」
あなたと守護聖たちの物語が、ここから始まります――――。
アンジェリークは初代をプレイしたっきり触れていなかった。ネオロマンス(ネオロマ)系列作品もコルダ無印以降未プレイ。乙女ゲーもほとんどプレイ歴なし。
ではなぜ体験版をダウンロードしてプレイしたかと言うと、マキマミ*1最終巻でのプロデューサーインタビューが良さげだったことと、攻略キャラの一人:カナタのプロモーションTwitterが面白そうだったからだ。
「異世界に連れ去られる」ことをこちら側だけが知っている上で見る男子高校生の日常Twitter、普段「しんどい」と言われてもピンとこない人間としても「しんどい」。
アンジェリークは乙女ゲーと言っても、育成+国盗りシミュレーションゲームの要素が強い*2。
難易度:普通・難しいの両方プレイ。体験版でプレイできる範囲内だけで3回プレイした。元より育成ゲームは好きなこともあり楽しかった。
作業ゲーだけど、恋愛に現を抜かしていたらライバルに敗北するので、ある程度真剣に大陸を育成しなければいけない。ここら辺のバランス感覚が面白くていい。歯ごたえがある。
以下、ネタバレを交えつつ攻略メモと各キャラごとの印象まとめです。気になる人はSwitchで体験版をダウンロードしてみるといいです。
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【CD】キャラの罪を考察して許す/許さないのラインを探る「MILGRAM」
DECO*27×OTOIRO×山中拓也による視聴者参加型音楽プロジェクト「MILGRAM 」。
視聴者の投票によって展開が変わるCDプロジェクトは「ヒプノシスマイク」のヒット以降各所で見るようになったけど、「MILGRAM」はキャラの心象風景を映したMVと楽曲から該当キャラクターがどのような罪を犯したのかを考察するミステリー要素がある点が面白い。
第三審まで用意されているらしいが、現在第一審の段階なのでキャラクターについて明かされていない内容が多く、MVを繰り返し見て推測していくしかない。上手いやり方だと思う。曲もいいから繰り返し見るのが苦にならないし。
以下、各MVごとに推察と感想です。ネタバレアリアリ。
1.各MVの推察・感想(「half」まで)
①アンダーカバー/エス(CV:天野由梨奈)
看守ポジション:エス。彼(彼女?)は囚人ではないのでMVも彼の罪についてではなく各キャラの頭出しのような内容。メイントレーラーみたいなもの。
歌詞とMVで映るキャラの罪がリンクしている、と思われる。あとラスサビでは高速でキャラの殺人内容のカットが出てくるので、新しいMVが出るたびにここに戻って確認する。
②弱肉共食/ハルカ(CV:堀江瞬)
1)考察
ひらがなたっぷりの歌詞や高校生相当の年齢からするとちょっと幼すぎるMVの光景からして、おそらく何かしらの発達障害を抱えていると思われる。
MVの男の子については諸説あるけど、「愛される弱者になりたかった」という歌詞やサンプルボイスの「みんな駄目だから、ちょっと安心するし」という台詞と照らし合わせてハルカの弟ではないかな、と思う。二重人格説も出てきたけど、それはNo.9のミコトが当てはまりそうだし。*1
ハルカ自身は引きこもり・親の愛情が得られない中で弟に嫉妬し、飼い犬・弟と仲のいい女の子を殺していって最後に弟を殺したのではないかな。虐待があったとは思うけど、ネグレクトかはちょっと断言できない。
2)許す/許さない
ハルカは現時点で罪の内容や彼の性質について諸説あるので今後どう転ぶか分からないけど、どう転んだとしても私は許さない方に入れるな、と思った。
ハルカ自身の境遇に同情できる点は多々あるけれど、殺された飼い犬・女の子に全く罪がない。犯人が可哀想だから、で許す選択肢は私にはない。
第一審の結果は「許す」だったのでびっくりした。
②アンビリカル/ユノ(CV:相坂優歌)
1)考察
初見では普通のデートムービーでは? と思ったけど他の方の考察を見て後々見返したら援助交際での妊娠→堕胎だった。カットごとに服装もヘアメイクも全く変わっているのが相手が違う証拠と指摘されているのを見た時はなるほどな、と思った。
堕胎と言われているけど風船の中の風船=臓器が複数あるのを潰しているので産んだ後殺したのでは? と思って調べたら胎児の臓器は妊娠12週頃でおおよそ出来上がるらしい(初めて知った)ので、サンプルボイスの「人殺し、人殺しねえ。まあそうなるかな」という曖昧な反応と合わせて堕胎で合ってた。
キャラに罪の意識がない方が心象風景を映したMVで罪の考察が難しくなる(何故なら自分が何を犯したか直接的に映らないから)つくりなのは上手いと思う。
2)許す/許さない
許す。堕胎であれば相手がいるわけで、ユノ一人に罪を負わせるのはどうかと思う。ユノ自身に特に罪の意識がなさそうなのは気になるけど、影響があるのはユノの身体に対してであって、他人には特に影響がないので、私が口出しできる話ではないなと感じた。
③事変上等/フータ(CV.ランズベリー・アーサー)
1)考察
正義感からのネット炎上火付け行為によって一人が自殺に追い込まれる。今のところ出ているMVの中で一番わかりやすい。「正義感ある小心者」がこういう罪を犯すところまで綺麗な設定。
最後に自身が炎上に追い込まれるからMVもはっきりと罪の内容が分かるようになっているんだなと分かる。自殺に追い込んだ子は高校や大まかな住所までさらしているから、きっとフータの自宅もバレていますね。
2)許す/許さない
これはちょっと悩むけど許す。ただ罪が軽いからというより、現状ネット炎上しているフータは許した方が自身が犯した罪を思い知らされると思ったので、同じく許すユノとは判断基準が違う。世界観的にここで許さないを選んでも第二・第三の同様の事態を出さないようにする抑止力になるとは思えないし。
④アフターペイン/ムウ(CV:香里有佐)
1)考察
なるほどいじめられたことによっていじめた相手を殺したんだな……と最初思ったけど違った。
よく見ると殺された子はいじめている子の中にはいないし、最後の黒板の落書きはムウのことではない。ふと一時停止して見たラインのやり取りに性悪さを感じて見返したら、「かつていじめていた相手を、立場が変わって自分がいじめられるようになったから殺した」MVだと気付いた。
凄まじい自己愛の持ち主だけど、「(かつての自分の行為を棚に上げて)私がこんな目に遭っているのはお前のせい!」と仮想敵を仕立て上げて殺しに行く姿勢は極端だと思いつつもあり得そうだなと思った。
最初に見た時は可哀想さが先行しただけに、見方を変えるとぞっとする。MILGRAMのMVの中で一番いいと思う。
2)許す/許さない
これは許さない。殺した自覚はあるけどMVの作りから見るに反省してるとは思えない。それどころか、自分の悪性を全く自覚しないタイプの人種に見える。また同じような状況に陥ったら再犯するのでは?と思う。
第一審の結果が「許す」になったのはハルカ以上にビックリした。
⑤スローダウン/シドウ(cv.仲村宗悟)
1)考察
患者を死亡させて、大切な人の蘇生?のために臓器を収集している。何回か見て殺害対象=患者、目的=臓器収集は分かったけど、公式Twitterで「花人間=シドウの大義」と言われるまで、臓器売買か特定人物への無断臓器提供かわからなかった。*2
最終的に臓器の不適合につき花人間も死亡……ということですかね。静謐さがあるグレートーンのMVだけど、今のところ唯一の大量殺人案件。
2)許す/許さない
シドウは一番悩む。目的喪失につき再犯の可能性はないけど、本人が歌の中でも「どうか 許さないでくれ」と言っていて、さらに大量殺人である。本人の態度としては「許す」でよいのでは? と思いつつ、犯した事態が「許さない」べきだと警告してくる。
難しいけど……許さないかなあ。大量殺人を犯したことに変わりはないわけだし。
⑥愛なんですよ/マヒル(cv.岡咲美保)
1)考察
MILGRAMのMVは男性だと罪が分かりやすく、女性だと罪が分かりにくい仕様になっているけど、マヒルは一番難しい。最初にMVを見た時は単なるファッション雑誌系のリアル充実アピールものにしか見えなかった。分からなさ過ぎて他人様の考察を読み漁ったけどこれといった確定情報が出てきていない。
MV中に出てくる青い羽根は諸説あるけど、あれはTwitterのことで、鳥籠のような部屋はつまり「鍵垢からTwitter監視」と言うことじゃないかなと思う。冒頭に出てくるマーブル模様の背景がインスタグラムのアイコンの色味だったので。
直接手を下したか否かはさておき、マヒル自身が殺しに関わった自覚があるので、考えているのは以下の2通り。
- 付き合っていた彼氏に捨てられた。それを認められずストーカー行為に発展し、家に忍び込んで料理を作るまでに至り、苦悩した元彼氏が自殺。
- 付き合っていた彼氏は二股をかけていた。自分が真の彼女と信じて疑わないマヒルは相手の女を殺害。そのことに気付いた彼氏が自殺。
彼氏を殺したとは思えないので自殺ルートだと思うと、この2択ではないかなあと。2は飛躍しすぎでは? と我ながら思うけど、Day13以降の変わり方からすると、彼氏との交際を邪魔するものがいる、というのは間違っていないのでは、と。あと捨てられているとなるとDay14のデートの説明がつかないので。
最後に落ちる青い羽根はTwitterでの死亡報告じゃないかな。
2)許す/許さない
マヒルは悩む・悩まないというよりも、そもそもの罪が特定できないので判断ができない。ただ愛が重い、でストーカー行為・殺害行為に踏み切ったのなら許せないかなあとは思う。
⑦half/カズイ(cv.)
1)考察
不倫によっての配偶者自殺。前回のマヒルがいまだに確定できていないのに対して、こちらは初見で大体は理解できた。配偶者の飛び降り自殺がはっきりと映っている分、ある意味フータよりも分かりやすいかもしれない。
仮面をつけた芝居は「仮面夫婦」の隠喩では? という考察を見た時はなるほど! と思った。
ムーディーでいい曲だなと思うんだけど、既婚で堂々と不倫して配偶者が自殺している状況下で不倫側が歌う歌だと考えると正直腹立たしい。
2)許す/許さない
心情的には上記理由から許さないではあるのだけど、直接手を下したわけでもなく不倫しただけと思うと、許さない=死刑はやりすぎではないかという気持ちがある。なので投票では許すを選ぶかもしれない(まだ迷っていて投票できない)
でも不倫側が「あなたの心が変わってくれたら なんてありえない」と相手側に事態解決を求めていると思うと本当に腹が立つんだよな。
2.MILGRAMの魅力
ここまでMVに触れつつあれこれ言ってきたけど、正直MILGRAMに触れる時に考察は決して必須ではない。
私はあれこれ考えるのが好きなので上記でうだうだ述べているけど、そんなことしなくてもYoutubeのコメント欄に考察はあふれているし、「何が罪か」なんてコメント欄で確認して、この曲好きだな、MVいいよね、と思うだけでも充分楽しいコンテンツだと思う。
それを前提に、私がMILGRAMで一番良いと思っているのは、各キャラクターの許す/許さないを判断することで、自分自身の許容ラインと判断基準を知れるところだ。許す・許さないの判断基準をコンテンツ側が特に決めていないから、自分の裁量で判断を下すことができる。それを繰り返して自分を知ることができるのが一番魅力的だと思う。
私の場合だと以下が判断基準だ、と記事を書いていて分かった。
- 被害者に落ち度はあったのか
- 反省はしているか
- (現代日本の法律に照らし合わせて)重罪と言えるのか
「許す」を選んだキャラを見ると、「3.重罪と言えるのか」がNoだと思ったところに起因していた。心情的に許したくても「流石にこれは重罪だろう」と思ったら「許さない」にしてしまう。反対も然り。
いやでもカズイはちょっと信条としては本当に許しがたいんだよな……。
と、だらだら書いてみたけど楽曲がいいし声優さんも歌が上手いので、特に気にせず楽曲を聞くだけで楽しめるコンテンツだと思います。
一番お気に入りの曲。すごくかわいい。CDに収録されている「サイコグラム」のカバーもおすすめ。
エスの曲も好き。
【アニメ・映画】シン・エヴァンゲリオン𝄇劇場版を見終えて
見てきました「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」。
新劇場版はリアルタイムで追っていましたが、TVシリーズや旧劇場版は大学生の時に一気見した程度なので、言うほどエヴァに思い入れはないのですが、それでもエヴァンゲリオンが終わったという事実に感慨があります。
一つの時代が終わったんだな、と実感しました。
以下、自分なりの整理をしつつの感想です。ネタバレしかないのでまだ見てない方は映画に行ってからお開きください。
1.新劇場版についての整理
①新劇場版とはなんだったのか
メッセージとしては「大人になれよ子どもたち」でしょう。
そしてエヴァンゲリオンを純然たるエンタメではなく庵野秀明氏の私小説の側面があるととらえた時に、新劇場版は旧劇場版でもできなかった「エヴァンゲリオン=子どもの精神で作り上げたエヴァを、大人として終わらせるための儀礼」だったのだと思います。
シン中盤のヴンダー艦隊戦がBGM等からノーチラス号のセルフオマージュであり宇宙戦艦ヤマトへのリスペクトだったと思うので、それを踏まえると庵野秀明氏が子ども時代にさよならを告げるにあたっての餞だったのでしょう。
②「エヴァンゲリオン」とは
新劇場版におけるエヴァンゲリオンは「子ども」の象徴でしょう。そのためエヴァに近しいパイロットやネルフの人間は基本的に子どもです。
これは姿かたちが子どもであるパイロットだけでなく、冬月やゲンドウといったネルフの中心人物や、序~破までのミサトも「身体だけ大人になった子ども」です。
新劇場版はシンジくんの成長物語が軸になっているですが、厄介なの「こうあるべき大人像」に見合った大人が終盤までほとんど表れないことです。
シンジくんがお手本にするべき大人が身近にいないので暴走したため、シンジくんと同じ子ども(シンジくんよりは少し大人だけど)であるカヲルくんがシンジくんのメンターを引き受けた。けどカヲルくんも大人になれない子どもなのでカヲルくんはメンターになりきれず爆死し、シンジくんのメンタルも崩壊した……というのが私なりのQの要約です。
新劇場版においてエヴァンゲリオンの世界とは「大人になったら解脱する世界」であり、だから村で人としての営みによる喜びを知った綾波や、ケンケンという大人に甘えてもいいことを悟ったアスカが退場していったのでしょう。
③碇ゲンドウについて
先ほど触れましたが、碇ゲンドウは新劇場版においては「身体だけ大きくなった子ども」です。子どもなのでシンエヴァ終盤でエヴァ13号機を操ってシンジとダイナミックな父子喧嘩ができたし、子どもなのでシンエヴァで最後に解脱することになった。
で、これは旧劇場版がなぜあんな結末になったのかの推論になるのですが、新劇場版のエヴァンゲリオンにとって碇ゲンドウ=「こうあるべき大人像であり父親像」だったため、目指すべきシンジくんの成長が描けなかったことにあるんじゃないかと思います。
シンジくんの成長には、父である碇ゲンドウが自身の幼児性を自覚して成長することが不可欠だったのですが、碇ゲンドウを「こうあるべき大人像・父親像」から動かすことができなかったためシンジくんもつられて成長できず、むしろ成長を拒絶した結果のアレだったのではないかと。
いやゲンドウの「人に自分の要望を押し付けながら説明を求められると理不尽な圧かけて逃げる」姿は「あるべき大人像・父親像」としてはダメだろと思うのですが、現実にこういう大人がいっぱいいる以上、当時の庵野秀明氏はじめとしたスタッフにとってはゲンドウこそが「こうあるべき大人像・父親像」だったのかなと思います。
シンエヴァを見た今、エヴァはそもそもゲンドウがユイの死を受け入れてシンジくんと向き合い、一緒に晩御飯を食べていればそれで終わる話でした。
碇ゲンドウを新劇場版でようやく「身体だけ大きくなった子ども」と定義できたので、「自分の子どもに自分の苦悩を告白する」という大人になり切れない子どもとして一番恥ずかしい行為を経て、ようやく碇ゲンドウも大人として解脱することができたわけです。
④エヴァンゲリオンにおける「大人」とは
エヴァが「子ども」の象徴なら、新劇場版作中における「大人」の象徴は安野モヨコです。
えっ何言ってんの?と思われたかもしれませんが、旧劇場版~新劇場版までの間に庵野秀明氏にあったことと言うと安野モヨコとの結婚なんですよね。結婚生活を経て「こうあるべき大人像」を再度定義しなおすことができたから新劇場版を作ることができたんじゃないかなと思います。
新劇場版での「こうあるべき大人像」は碇ゲンドウではなく、トウジやケンケンといったシンエヴァの村の人々です。村が「大人」の集合体だからこそ、村に当たり前のようにシュガシュガルーンがあるわけです。
⑤マリについて
正直よくわかってないところの方が大きいんですが、エヴァにおいてマリはエヴァのパイロットでありながら破で登場した時点でミサトの指示を受けずに単独行動ができる=「責任を背負って動くことができる大人」でした。
「イスカリオテのマリア」は見終わった後検索したのですが、文脈的には冬月が「俺たちを残してお前一人だけ大人になりやがって」とマリを指したのでしょう。
新劇場版の目的が「大人になること」ならば、大人になったシンジくんが最後に「最初から大人であった」マリの手を取るのは道理だなと思いました。
2.エヴァンゲリオンを見終えての感想
正直、大人になった庵野秀明に「一人だけ大人になってんじゃねー!」と言う気持ちが全くないというと嘘になります。
ただそれよりもエヴァという一つの時代の終わりを希望にあふれたビジョンで示してくれたことへの感謝の方が大きいです。
キャラクターが大人になっていく過程が、そのままエヴァという作品の卒業につながっているんですけど、「人と人がかかわりあっていく社会」の在り方の暖かさに、卒業していいんだなあと思えました。エヴァでこんなに清々しく優しいラストになるとは思わなかったのでびっくりです。
あとはこれが最後だ!と言わんばかりのバトルシーンは全て圧巻で、単純に見ててとても楽しかったです。マリアスが2人手を取り合って殴りこんでいくシーンはプリキュアでした。
まだほかにも言いたいことはありますが、見れてよかったです。一つの時代の終わりに立ち会えたことに感謝します。
【ゲーム】リーガルダンジョン(Switch/Steam)感想
警察官になって捜査書類を作成するADV「リーガルダンジョン」をプレイした。
罪とは、どこから生まれるのか
ここは、罪と罰、そして、ノルマが入り組んだ迷宮。
警察官として、ダンジョンと化した8つの事件の膨大な書類を読み込め。
証拠を集めて被疑者と闘い、「有罪」「無罪」の意見を提出せよ。
その判断が、人の、そして自分の運命を大きく左右する。
罪とは、どこから生まれるのか。『リーガルダンジョン』は警察官になり、捜査書類を作成するゲームです。
あなたは窃盗、殺人など8つの事件と関係のある捜査書類を読み、関連法令と判例に従い最終的な捜査意見を作成していきます。犯罪者を検挙し処罰する過程を繰り返していく中で、このゲームはあなたに「検挙実績こそが治安のバロメーター」ということを教えてくれます。さあ、ダンジョン内であなたを待っている『真の犯人』を探しに行くのです。
総プレイ時間7~8時間程度。
起訴すべきか、不起訴とすべきか悩む事件ばかりで難易度も高いけど、ゲームで使用するシステムのAI「あおい」が指針を示してくれるので、そういう点ではやりやすかった。
腐敗した警察が舞台なので後味が悪いけど、個人的には好ましい方向での後味の悪さだった。これで980円は大変コスパがいい買い物をしたなと思うので、気になる人は買って損はないと思う。
一点、Switchでプレイしたためかカーソル移動のレスポンスの悪さは気になった。Switchに移植してくれたことに感謝しつつ、PCでプレイすることに慣れている人はSteamでプレイしたほうがやりやすくていいと思う。
以下、ネタバレありの感想です。特に攻略のヒントになるようなことは書いてないので、ゲームをプレイしている、または気になっている人は見ないほうがいいです。
1.初回プレイ時の印象
AI「あおい」の指針に従って最後までクリア。最初に迎えたEDは出世大勝利EDでした。
初回プレイした状態でまとめたあらすじは以下の通りでした。
腐敗した警察署に配属された主人公は、点数稼ぎのために大したことない過失を特殊窃盗罪として起訴したり、明らかな犯罪者が地元の権力者の息子だったために不起訴にせざるをえなかったりといった環境に次第に慣らされていく。
暴行致死罪だろと思われる公務員をみすみす不起訴にしてしまった後、点数稼ぎのために部下が危険なおとり捜査を行った結果悪質記者に脅されかけたり、虚言癖の女子大生を追っ払ったりした末に、DV加害者を不起訴処分としてしまう。
後日、不起訴にしたDV加害者が交通事故を起こす。これを故意の殺人だと見抜いた主人公は、あわせてDV加害者がもう一人殺害している事実を見抜き、連続殺人犯として検挙し、見事出世する。
最後の犯人の動揺にあれ?と思いつつこんな感じの話だと思ったので、最後の原田の咆哮はよくわかっていなかった。
そのあと、最後の事件の分岐をやり直して迎えたEDで主人公が逮捕された。
えっ?
罪状は「殺人幇助、死体遺棄、職務放棄」
えっ!?
初回プレイではAI「あおい」に従って動いたため、この罪状につながるヒントは何も見れていない。なので、(証拠捏造という職務放棄はしたんだろうなと思っても)殺人幇助・死体遺棄を犯した覚えは全くないし、検察官から「鬼畜の所業」と言われる覚えもない。
私の知らないうちに一体何をしでかしたんだ……!?
2.全ED見た上での感想
①全ED見た上でのあらすじ
全てのED・テキストを見終えた結果、あらすじは以下の通りだった。
腐敗した警察署に配属された主人公は、点数稼ぎのために大したことない過失を特殊窃盗罪として起訴したり、明らかな犯罪者が地元の権力者の息子だったために不起訴にせざるをえなかったりといった環境に次第に慣らされていく。
ある日、ホームレスに暴行し殺害した公務員を暴行致死罪で起訴した主人公と原田は、点数稼ぎのためにおとりの老人を雇って介抱ドロを捕まえることを発案する。
その頃、特殊窃盗罪として起訴された山本孝之は失踪した孫を捜索していた。しかし警察は信用できず、捜索のためのビラを自費で印刷しようとした結果、印刷費の1万円欲しさに介抱ドロのおとりになることを受ける。
介抱ドロのおとりとなった山本孝之は、しかし女子大生の通り魔に殺される。介抱ドロのおとりのつもりが殺人事件を招いてしまった主人公・原田は死体を隠蔽し、主人公は点数稼ぎのため今後現れるだろう殺人犯に殺人罪を被せる計画を立てる。
後日、DVで署に引っ立てられた男を殺人潜在犯と見抜いた主人公は、いったん不起訴扱いにして帰す。
その後、思惑通りに妻を事故に見せかけて殺害した男に山本孝之殺害の罪を被せることに成功した主人公は、原田を切り捨てて見事出世を果たす。
全然違う話になったが……!?
単なる虚言癖だろうと話を聞いて解放した女子大生のエピソードが特に衝撃だった。ただの虚言癖だと思っていた話にこんな裏があったとは……。
最後の事件で失敗した場合のEDに出てくる冷蔵庫の中身は、①真理の死体②山本孝之の死体の2通りの解釈がある。このどちらかなのは間違いないけど、①は真理殺害について作中で全く触れられてないし、②だと死体焼いた後なので違和感がある。ここらへんはご想像にお任せする、というところなのだろう。
②真犯人
リーガルダンジョンにおける真犯人は成果至上主義を始めとした構造だ。
点数稼ぎに精神が麻痺し違法おとり捜査・死体遺棄を犯した主人公が逮捕時に涙したように、サイコパス・潜在犯と言われない犯人は、冷静になるとなぜこんなやってしまったのかわからないような落とし穴にはまっている。
社会の構造の穴にはまったのは主人公だけではない。山本孝之・真理の2人や、介抱ドロ事件のおとり・犯人はみな社会の生み出した「貧困」という落とし穴にはまっている。安定した財政基盤があればこんなことやってないだろう。
元は韓国のゲームなので、この貧困の構造は「パラサイト」を思い出した。
③後味の悪さ
リーガルダンジョンの後味の悪さはこの構造をどうにもできないところにある。
黒幕が個人ではないので殴ってスッキリというわけにはいかず、かといって主人公の行動によって構造が変えられるわけではない。ただ成果至上主義と言う構造に問題があることを暗に指摘して終わる。
ファンタジー要素がほとんどない作品だから結末をファンタジーにするわけにはいかず、EDで作者が「考えてほしい」と言っていた通りこの構造の是非を問う話なのだろう。社会派を謳う以上その落としどころは正しいと思うけど、スッキリしない話ではあるので人を選ぶとは思う。
④感想
このゲームのむちゃくちゃ上手いところは「AIあおいに従うと何もわからないまま最後まで進められて出世EDを迎えることができる」ところだと思う。
上記の通り、出世EDは主人公が殺人幇助・死体遺棄・職務放棄をしているがそれが明るみに出ないEDだ。
ひるがえってAIあおいに従わない他EDは主人公(=プレイヤー)の良心に従った結果だ。AIあおいに従わないことで警察官としては停職となったり逮捕されたりするが、良心は守られる。
AIあおいは成果至上主義の象徴であり、システムに従うことで人道にもとる行為が出来てしまうことを示唆している。構造が犯罪を生み出す、という作品のテーマが実際どういうことなのかを追体験できる。
社会派ミステリーは小説媒体を漁れば数えきれないほど存在するけれど、この追体験はこのゲームのUIでないと出来ないものだったと思う。そういう意味で、ゲームをプレイできてよかった。
【小説】汚れた手をそこで拭かない(芦沢央) 感想
今回の直木賞候補は全員初の候補入りなので受賞作が予想つかなくて楽しい。
既読は3作品で、先日読んでめちゃめちゃ面白かった「汚れた手をそこで拭かない」(芦沢央)が入っていてうれしい。とてもうれしい。
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。
元不倫相手を見返したい料理研究家……始まりは、ささやかな秘密。
気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、
見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意! 研ぎ澄まされたミステリ5篇からなる、傑作独立短編集。
全5編、大変レベルが高いミステリ短編集。著者の過去作品「許されようとは思いません」と同じく、トリッキーなプロットで楽しめ、人間の脆弱さを嫌味なく見せつけられる。ただ5作中3作は倒叙モノのため、「許されようとは思いません」ほど鬱々としないのがいい。
以下、ネタバレ込みで感想です。
1.犯罪を犯すのはどういう人か
全作読んだわけではないので断言はできないけれど、芦沢作品において、ふとしたはずみで犯罪を犯してしまうのはおしなべて真面目な普通の人だ。日常生活をつつがなく送ることを常としているからこそ、いったん落とし穴にはまってしまうと抜け出そうともがいてとんでもない犯罪を犯してしまう。
今作の中だと「埋め合わせ」が特に顕著だ。プールの水をちょっとしたミスで流失させてしまったことからミスを隠蔽しようと奔走する小学校教師の話だ。
ミスが明るみに出た場合の賠償金は作中で語られる通り13万円で、人によってはたったそれだけのお金でこんなことするの? と思うだろうけど、この教師はたった13万円が払えない事ではなくミスが明るみに出ることを恐れている。「怒られたくない」という心理が真っ当な倫理を排除し隠ぺい工作に走らせる。気持ちは分かるだけに教師の憔悴っぷりが痛ましくて面白い。
「埋め合わせ」が面白いなと思ったのは、この「怒られるのが嫌でミスを隠蔽しようとする真面目な」主人公の対照としてちゃっかり者の同僚教師が出てくるところだ。ちゃっかり者の同僚教師は最終的にプールの水の流失をより大事にし、彼が本当に隠したかった「競馬ですった金」の存在の埋め合わせを行う。
ちゃっかり者と主人公とでは優先順位が全く違うのだ。「お蔵入り」もそうだったが、主人公と全く違う論理で動いているから、主人公の思惑が上手くいかなくなる。芦沢作品らしい真面目な人がはまる落とし穴を、では真面目ではない人が同様の目に遭ったらどうするのか、という一つの回答が示されている。
こんな風に生きれたらいいな……と思う。
2.「ミモザ」考察
他の作品も後味が良いとは(「ただ、運が悪かっただけ」を除いて)いえないが、収録作ラストの「ミモザ」の後味の悪さは別格だ。しかし同じ主婦が陥る地獄として「許されようとは思いません」に収録されていた「姉のように」が分かりやすかったのに対し、「ミモザ」は一読した時点では「なぜこんなに後味が悪いのか」と思った。
「ミモザ」は振り返ると、主人公の行動原理がよくわからない。料理研究家としてサイン会を開けるほどの地位を築いたのに、かつての不倫相手に会いに行くなんて自殺行為だろ……としか思えない。
私は、この男を見返してやりたかったのだ。
あなたが軽んじ、踏みにじった小娘は、いつの間にかあなたよりも高い場所まで上っていたのだと。
この心理は分かるが、今成功しているのに昔の瑕疵にそこまでこだわらんでもいいんじゃないの、と思った。
再読して全てが氷解したのはラストの夫の描写だ。
『何考えててもいいけど、ちゃんとしてよ』
玄関に自分のものではない男の靴が転がっていたら妻の浮気にたどり着くのは普通だ。しかし妻の浮気に激高せず、「ちゃんとしろ」と暗に示してくる夫は正直普通に思えない。この夫、妻をどう思ってるんだ……? と思ったところで血の気が引いた。
「ミモザ」の後味の悪さは、男に支配されて、虚栄で着飾って生きていくしかない女の地獄によるところだと分かった。
「ミモザ」で夫がしゃべるのはラストシーンのみで、それ以前は主人公の言葉や描写で語られる。
「夫は、優しい人です」
私は答えながら、英作文みたいだなと思った。
配偶者や家族を説明する時の言葉なんて定型的になるよな、と思ったけど、ラストを読んだ今振り返ると主人公から語られる夫のエピソードそのものが、本当にあったものなのか疑わしくなる。相手に話して聞かせたら羨ましく思ってもらえるエピソードを創作しているだけじゃないのか。
セックスレスなのは夫の仕事が忙しくて、冷たく感じるだけかもしれないけれど……疑念は消えない。
料理研究家として成功し自分の収入だけでもタワマンに住めるくらいの地位を築いている女性でも、虚栄を繕って夫の顔色をうかがって生きていくのか……と思うと心底ぞっとする。
ラストにこの話を据えたのは以下の会話があるからかなと思ったけど、通して読むと真面目な人ほど一度穴に落ちるとどうしようもなくなる絶望が強調されていると感じた。
「私、あなたに何かした?」
「別に」
頭上から、白けたような声が返ってくる。
「だったらどうして……私は悪いことなんてしてないのに」
「悪いことをしたから悪いことが起こるとは限らないんだよ」
【BL雑談】「このBLがやばい!2021年度版」が発売されたのでざっくり分析してみた
今年はBL漫画をたくさん読んだので、数年ぶりに購入しました。
面白いな、と思ったのはランキングの集計。
BL有識者40名の回答を、1位=10点、2位=9点、3位=8点、4位=7点、5位=6点で集計しました。なお有識者の総得点がwebアンケートの総得点を下回る場合は、有識者の総得点が、有識者+アンケートの合計得点の50%以上となるよう整数倍されます。
昔買っていた時の集計はどうだったっけ……と思いつつ、最後の「有識者+アンケートの合計得点の50%以上となるよう整数倍されます。」を名言しているのは珍しい気がした。*1
調べたがりの性なので、こういうことを明言されるとでは有識者のみのランキングはどれだけ異なるのかが気になったので調べてみた。
ということで、以下有識者のみのランキングや他のざっくりした分析、個人的な感想を記載しています。興味のある方はどうぞ。
なお、先に申し上げるとこの集計方法は後述の理由により正しかったと私は思っています。
*1:本誌にてこの集計方法は今回が初めてである旨が記載されています
スパダリ=金持ちの図式に納得がいかないのでスパダリとスーパー攻め様の成り立ちを検索してみた
JKの令和のネクスト流行語としてスッキリ!で「スパダリ」が取り上げられたらしい。
TVで取り上げられた程度なら「そんなことがあったんだねー」程度で終わるが、記事の描き方にビックリした。
BL用語での「スパダリ」とは、”攻め”キャラクターが、高収入、社会的地位、美しい容貌などを持ち合わせた超ハイスペック彼氏のことを意味し、人気のあるジャンルとして確立しています。ただ、現在は、財力がない未成年でもスパダリ認定することもあり、若者の使用例と同様に“理想の彼氏”という意味あいもあるようです。
……違うが!? それはスーパー攻め様であってスパダリではないが!?
私の認識が間違ってたのか……!? と思って色々検索してみたら、スパダリとスーパー攻め様の違いについて説明されているツイートがあった。
スーパーダーリンとスーパー攻様は別の存在、と担当さんに説明してもらって衝撃受けた(諸説アリ) pic.twitter.com/9h2D4fCyBZ
— あんじくん (@sein_anji) 2016年12月7日
BL作家:星名あんじ氏のツイート。2016年12月のツイートなので、2016年時点でスパダリ・スーパー攻め様はこのように区別されていた……少なくともBL漫画業界ではこのような認識が持たれていた、と言っていい。
私の認識は間違ってなかった……と安心するとともに、「じゃあなんでスパダリ=超金持ちなんて認識が一部で出来ていた?」と思ったので、グーグル片手に色々調べました。
以下、スパダリ・スーパー攻め様の成り立ちを調べたリポートです。
最初に結論を言いますが、スパダリ・スーパー攻め様ともに明確な語源は見つかりませんでした。個人HP時代・mixiまでは遡れなかった……。
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