【その他書籍】読書で離婚を考えた(円城塔・田辺青蛙) 感想&紹介本メモ
エッセイ? 書評本? 分類が分からなかったので小説以外の書籍は以降「その他書籍」とします。今のところ。
夫婦で本を勧めあい、感想を交換すれば、相互理解が進み、仲良くなれるはずだった。なのに、『羆嵐』『VOWやもん!』『クージョ』『台所のおと』『黄昏流星群』と、妻と夫が交互に本を紹介する読書リレーは、どんどん雰囲気が険悪に。相手の意図がわからず、慣れない本に右往左往、レビューに四苦八苦。作家夫妻にしかできない画期的読書案内。
すごい企画本だと思った。夫婦で作家でなければ成立しない企画だけど、実際に交流がある人に勧めるのはちょっと躊躇する企画だ。
ご夫婦のうち、円城塔はアンソロジー『誤解するカド』収録作を読んだのと、『スペース☆ダンディ』の脚本で見た程度、田辺青蛙はお名前自体初めて知った。ホラー作品はあまり開拓できてないので……。
すごく面白かったけれど、たぶんあまりご夫婦のことを知らないから楽しかったんだなと思う。
以下、つらつらと感想です。あと紹介されている本のメモ。
1.感想
これは、夫婦がお互いを理解するために本を勧めあった格闘の軌跡である。
ページをめくって真っ先に飛び込む言葉で面食らった。
目次で紹介されている本のジャンルが多岐に渡っていて、既読は『薄紅天女』と『バトル・ロワイアル』のみ。うーん私向きの諸標本ではなかったかなあと思ったけど、杞憂だった。
冒頭の言葉通り、この御本の本質は書評ではなく、嗜好の異なるご夫婦が本を通して互いを知るところにある。
なお最終的に相互理解できたかは……わからない。
先ほども書いたけれど、私がこの御本を楽しめたのはご夫婦についてほとんど知らなかったからだと思う。
かたや理知的でインドア派、かたや快活で行動的、まったく異なるご夫婦だから、お互いに本を勧めあっても感じ方がまるで違う。
書評本といっても書評のみで紙面が埋め尽くされているのではなく、日常のあれこれも綴られていて、そこかしこにご夫婦の価値観の違いが見て取れる。全く違うご夫婦が、なんだかんだ一緒に暮らしている様子を見るのが楽しい。
全部、ご夫婦を知らないから無邪気に楽しめることだ。あとがき対談で触れられているけど、ご夫婦のことを多少なりとも知っていたらこんな企画続けて大丈夫なのかと気が気じゃない。
一週間ほど実家に帰省していました。
僕は実家にいると痩せるんですよ。
この文が出てきた時は流石にゾッとした。あとがきでご事情が分かってホッとした。
この御本が面白いのは「互いを理解するための企画」なのに、最後まで理解しあえないところだ。その上でご夫婦として生活している。
読んでいると自分の両親のことを思い出した。私の家も母の方がおおらかでいい加減、父が掃除に小うるさかった。なんだかんだ30年以上一緒にいるので、別に相手の価値観と同一にならなくても暮らしていけるんじゃないかと思ってしまう。もちろん人それぞれだけれど。
一番面白かったのは、
【田辺青蛙】
何となく、この人とやっていけるんじゃないかと思ったのは、茶屋でくずもちを食べていた時に、夫が真剣な顔で黄な粉の上で黒蜜を繋げて遊んでいるのを見た時でした。
結婚前のデートを回想しての言葉に、
【円城塔】
きなこにまみれた黒蜜と、ラーメンスープに浮いた脂はつなげて遊ぶものなのでは。
こう返しているところ。あと文庫版後書きの、
【円城塔】
この人は本当に、このタイトルをつけることで、日々、ほんのかすかな違和感がゆっくりと成長していって、なにかの拍子に勢いをつけて姿を現す、ということを不安に思っていないのだな、という感動である。その違和感というのは、(以下日々の小さな違和感が1ページ埋め尽くす勢いで続く)
日々の違和感、多い。
2.気になった紹介本
今後読みたい御本メモとして記録。
①クージョ(スティーブン・キング)
キングは「スタンド・バイ・ミー」くらいしか読めてなかったことを思い出した。紹介読んでも面白そう。
②台所のおと(幸田文)
いい加減クックパッドのレシピを見て自炊するだけでなく、ちゃんとした料理本を読みたい。
③人間にとってスイカとは何か(池谷和信)
タイトルだけ大賞受賞作らしい。スイカで育んだ人々の絆と暮らし、めちゃめちゃ面白そう。
④立体折り紙アート(三谷純)
立体折り紙。絶対に自分にできる気がしないので眺めたい。
⑤野崎祥光 和のおかず決定版(野崎祥光)
いい加減レシピ本を(ry
⑥ソラリス(スタニスワフ・レム)
レムの著作は「完全な真空」しか読めていないので、ちゃんと小説も読みたい。