Yの悲喜劇

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【ゲーム】リーガルダンジョン(Switch/Steam)感想

 警察官になって捜査書類を作成するADV「リーガルダンジョン」をプレイした。

store-jp.nintendo.com

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プチデボットのことり氏によるキービジュアル。言われるとグノーシアの絵柄だ。

罪とは、どこから生まれるのか
ここは、罪と罰、そして、ノルマが入り組んだ迷宮。
警察官として、ダンジョンと化した8つの事件の膨大な書類を読み込め。
証拠を集めて被疑者と闘い、「有罪」「無罪」の意見を提出せよ。
その判断が、人の、そして自分の運命を大きく左右する。
罪とは、どこから生まれるのか。

『リーガルダンジョン』は警察官になり、捜査書類を作成するゲームです。

あなたは窃盗、殺人など8つの事件と関係のある捜査書類を読み、関連法令と判例に従い最終的な捜査意見を作成していきます。犯罪者を検挙し処罰する過程を繰り返していく中で、このゲームはあなたに「検挙実績こそが治安のバロメーター」ということを教えてくれます。さあ、ダンジョン内であなたを待っている『真の犯人』を探しに行くのです。

 総プレイ時間7~8時間程度。

 起訴すべきか、不起訴とすべきか悩む事件ばかりで難易度も高いけど、ゲームで使用するシステムのAI「あおい」が指針を示してくれるので、そういう点ではやりやすかった。

 腐敗した警察が舞台なので後味が悪いけど、個人的には好ましい方向での後味の悪さだった。これで980円は大変コスパがいい買い物をしたなと思うので、気になる人は買って損はないと思う。

 一点、Switchでプレイしたためかカーソル移動のレスポンスの悪さは気になった。Switchに移植してくれたことに感謝しつつ、PCでプレイすることに慣れている人はSteamでプレイしたほうがやりやすくていいと思う。

 

 以下、ネタバレありの感想です。特に攻略のヒントになるようなことは書いてないので、ゲームをプレイしている、または気になっている人は見ないほうがいいです。

 

1.初回プレイ時の印象

 AI「あおい」の指針に従って最後までクリア。最初に迎えたEDは出世大勝利EDでした。

 初回プレイした状態でまとめたあらすじは以下の通りでした。

腐敗した警察署に配属された主人公は、点数稼ぎのために大したことない過失を特殊窃盗罪として起訴したり、明らかな犯罪者が地元の権力者の息子だったために不起訴にせざるをえなかったりといった環境に次第に慣らされていく。

暴行致死罪だろと思われる公務員をみすみす不起訴にしてしまった後、点数稼ぎのために部下が危険なおとり捜査を行った結果悪質記者に脅されかけたり、虚言癖の女子大生を追っ払ったりした末に、DV加害者を不起訴処分としてしまう。

後日、不起訴にしたDV加害者が交通事故を起こす。これを故意の殺人だと見抜いた主人公は、あわせてDV加害者がもう一人殺害している事実を見抜き、連続殺人犯として検挙し、見事出世する。

 最後の犯人の動揺にあれ?と思いつつこんな感じの話だと思ったので、最後の原田の咆哮はよくわかっていなかった。

 そのあと、最後の事件の分岐をやり直して迎えたEDで主人公が逮捕された。

 えっ?

 罪状は「殺人幇助、死体遺棄、職務放棄」

 えっ!?

 初回プレイではAI「あおい」に従って動いたため、この罪状につながるヒントは何も見れていない。なので、(証拠捏造という職務放棄はしたんだろうなと思っても)殺人幇助・死体遺棄を犯した覚えは全くないし、検察官から「鬼畜の所業」と言われる覚えもない。

 私の知らないうちに一体何をしでかしたんだ……!?

 

2.全ED見た上での感想

①全ED見た上でのあらすじ

 全てのED・テキストを見終えた結果、あらすじは以下の通りだった。

腐敗した警察署に配属された主人公は、点数稼ぎのために大したことない過失を特殊窃盗罪として起訴したり、明らかな犯罪者が地元の権力者の息子だったために不起訴にせざるをえなかったりといった環境に次第に慣らされていく。

ある日、ホームレスに暴行し殺害した公務員を暴行致死罪で起訴した主人公と原田は、点数稼ぎのためにおとりの老人を雇って介抱ドロを捕まえることを発案する。

その頃、特殊窃盗罪として起訴された山本孝之は失踪した孫を捜索していた。しかし警察は信用できず、捜索のためのビラを自費で印刷しようとした結果、印刷費の1万円欲しさに介抱ドロのおとりになることを受ける。

介抱ドロのおとりとなった山本孝之は、しかし女子大生の通り魔に殺される。介抱ドロのおとりのつもりが殺人事件を招いてしまった主人公・原田は死体を隠蔽し、主人公は点数稼ぎのため今後現れるだろう殺人犯に殺人罪を被せる計画を立てる。

後日、DVで署に引っ立てられた男を殺人潜在犯と見抜いた主人公は、いったん不起訴扱いにして帰す。

その後、思惑通りに妻を事故に見せかけて殺害した男に山本孝之殺害の罪を被せることに成功した主人公は、原田を切り捨てて見事出世を果たす。

 全然違う話になったが……!?

 単なる虚言癖だろうと話を聞いて解放した女子大生のエピソードが特に衝撃だった。ただの虚言癖だと思っていた話にこんな裏があったとは……。

 最後の事件で失敗した場合のEDに出てくる冷蔵庫の中身は、①真理の死体②山本孝之の死体の2通りの解釈がある。このどちらかなのは間違いないけど、①は真理殺害について作中で全く触れられてないし、②だと死体焼いた後なので違和感がある。ここらへんはご想像にお任せする、というところなのだろう。

②真犯人

 リーガルダンジョンにおける真犯人は成果至上主義を始めとした構造だ。

 点数稼ぎに精神が麻痺し違法おとり捜査・死体遺棄を犯した主人公が逮捕時に涙したように、サイコパス・潜在犯と言われない犯人は、冷静になるとなぜこんなやってしまったのかわからないような落とし穴にはまっている。

 社会の構造の穴にはまったのは主人公だけではない。山本孝之・真理の2人や、介抱ドロ事件のおとり・犯人はみな社会の生み出した「貧困」という落とし穴にはまっている。安定した財政基盤があればこんなことやってないだろう。

 元は韓国のゲームなので、この貧困の構造は「パラサイト」を思い出した。

パラサイト 半地下の家族(吹替版)

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  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Prime Video
 
 ③後味の悪さ

 リーガルダンジョンの後味の悪さはこの構造をどうにもできないところにある。

 黒幕が個人ではないので殴ってスッキリというわけにはいかず、かといって主人公の行動によって構造が変えられるわけではない。ただ成果至上主義と言う構造に問題があることを暗に指摘して終わる。

 ファンタジー要素がほとんどない作品だから結末をファンタジーにするわけにはいかず、EDで作者が「考えてほしい」と言っていた通りこの構造の是非を問う話なのだろう。社会派を謳う以上その落としどころは正しいと思うけど、スッキリしない話ではあるので人を選ぶとは思う。

④感想

 このゲームのむちゃくちゃ上手いところは「AIあおいに従うと何もわからないまま最後まで進められて出世EDを迎えることができる」ところだと思う。

 上記の通り、出世EDは主人公が殺人幇助・死体遺棄・職務放棄をしているがそれが明るみに出ないEDだ。

 ひるがえってAIあおいに従わない他EDは主人公(=プレイヤー)の良心に従った結果だ。AIあおいに従わないことで警察官としては停職となったり逮捕されたりするが、良心は守られる。

 AIあおいは成果至上主義の象徴であり、システムに従うことで人道にもとる行為が出来てしまうことを示唆している。構造が犯罪を生み出す、という作品のテーマが実際どういうことなのかを追体験できる。

 社会派ミステリーは小説媒体を漁れば数えきれないほど存在するけれど、この追体験はこのゲームのUIでないと出来ないものだったと思う。そういう意味で、ゲームをプレイできてよかった。