【商業BL】「もらってください」(新井煮干し子)
童貞×非処女属性持ちにとって最高の本に出会った。
女の子とお付き合いする夢をもった希介の前に立ちはだかる
帰国子女のハイパーイケメンスパダリ男子、
なかちゃん(受)の巨大な愛と誘惑!!
希介はおちんちんをしゃぶられる快感に打ち克つことができるか!?
セックスが物語上のゴール地点に位置する童貞×非処女BLに私が求めているのは以下の2点です。
・受の言動にドキマギしつつなかなか最後まで至れない攻め
・攻の真摯さを可愛いと思いつつも早くセックスしたいなあと悩む受け
「もらってください」はこの2点が真剣に突き詰められている。なぜ攻はいい雰囲気になりつつ最後までできないのか、受は攻が好きなのに強引に押し倒せないのか、とても丁寧に描かれていた。
特にいいなあ、萌えるなあと思った点を項目立てて感想を述べます。
(がっつりネタバレあります)
1.セックスに対する価値観の相違
●希介(攻)=童貞
攻の希介は童貞である。しかも単純に童貞なだけでなく女性とのコミュニケーションも上手く取れないレベルの童貞だ。今まで恋愛と縁がない人生を送ってきたので、付き合うこと・セックスすることに対する脳内ハードルが高い。
(前略)
いや、断じて性欲などではない!
新しい人間関係を構築し、他者へのいたわり 思いやりを育んだ先にある性行為!!
手段でも目的でもなく結果としての性行為!!
希介は性欲とスキンシップの激しいなかちゃんに振り回されながら、しかしセックスに至るまでの過程に確固たる理想を持っている。(そのわりにセックス以前の行為は雰囲気と勢いに流されて色々としているけど)
それまで女の子と付き合いたい、と思っていた希介はなかちゃんに迫られてドギマギしていることに向き合い、いつかするだろうデートの予行演習にとソロで水族館に足を運ぶシーンがある。
なかちゃんが自分より大きいから惹かれるのかと悩みながら魚の大きさを観察したりイルカショーのクジラとハイタッチしたりした末に、
なかちゃんじゃなきゃこんなふうになんねーよお……
かわいい。希介は全編通して大真面目だ。だから悩んだり振り回されたりしている姿がめちゃめちゃかわいい。
○なかちゃん(受)=非処女
一方のなかちゃんはコミュニケーション能力が高いゲイで、同性とのセックス経験がある。しかもただ経験があるだけじゃなくて留学中に男に不自由しなかったエピソードまで出てくる。人生経験が豊富ななかちゃんだから、セックスに対するハードルは低い。
じゃあどこですんの? いつすんの?
3ヶ月経ったら? ケッコンしたら? 大事ってそーゆーこと?
今したっていいじゃん~~~~!!
読んでてなかちゃんとシンクロした瞬間のモノローグです。そうだよな今したっていいよな……。
けれどなかちゃんは希介の意思を尊重する。留学先で知り合ったボーイフレンドと再会してお持ち帰りされそうになるワンシーンで、なかちゃんが希介の進展速度をもどかしいと思いつつも希介との関係を楽しく思っているのがよくわかる。
なかちゃんは希介が好きだからつながりたいけれど、希介が好きだから希介の思う通りに進めてほしいと思うのだ。希介がなかちゃんに振り回されているように、なかちゃんも希介に振り回されている。だからなかちゃんもかわいい。
☆かわいい×かわいい=最高
「もらってください」は価値観の異なるかわいい子とかわいい子がいちゃいちゃ絡み合うBLだ。セックスへのハードルがバラバラだから言葉にした上でないと行為をなせない。
希介となかちゃんは同い年でも過ごしてきた環境が、人生経験がまるで違う。 同性でも価値観の違う2人が互いの考えを理解しながら寄り添う合う姿が見たいことも商業BLを読む理由の一つだ(異性はどうやっても価値観が違うのは当たり前だと思うので)
2.身体の密着度が高い
挿入をともなうセックスは物語の最後だけど、挿入を伴わない行為は挿入の前に一通りこなしている(キス→フェラ→素股まで前半やっている)なのでH度は商業BLの中ではそこそこ高め。
特徴的だなあと思ったのは、2人が身体をくっつけるシーンが多いこと。いちゃいちゃ系ラブコメなので当たり前かもしれませんが、物語の重要な局面ではなく日常的に抱き合う・触れ合っていちゃいちゃしている様子を見られるのは眼福以外の何物でもないです。
「もらってください」は体格差BLでもある(しかも受のなかちゃんの方が色々大きい)ので、密着度が高いとその分骨格や筋肉の違いを感じられるのもいいです。同じ無地のTシャツ着てても、ひょろっとした希介とムチムチ気味のなかちゃんでは上腕二頭筋のハリがまるで違う。ムチムチでガタイのいい受けは最高です。
3.最後にセックスで終わるところ
「もらってください」は初夜を終えたところで締めくくられる。最初に読んだ時は事後の描写は少しあるけど後日談はないのかあ、と思った。
けれど再読してこの〆方が一番綺麗だなと思った。物語の起点が希介の「彼女ほしい!童貞捨てたい!」にあると気付いたからだ(中盤以降のいちゃいちゃ度が高すぎて起点を忘れていた……)
物語は9割希介の視点で進む。童貞を捨てたいと思っていた(けれど童貞を捨てるまでの経緯は雑であってはならない)希介がなかちゃんに出会い、惑わされつつも最後になかちゃんに童貞を「もらってください」と言って叶えられて終わる。帰結としてこれ以上なく綺麗だった。
……でも後日談があったらめちゃめちゃうれしいです(本音)
振り返って感想書いて、すごくプリミティブに良いBLだった。いちゃいちゃBLは最高です。